「おや？ 来られたようですよ？」 シウバは隣にいる日色に、次の第三回戦

「おや？ 来られたようですよ？」


シウバは隣にいる日色に、次の第三回戦の『獣人族ガブラス』がやって来たことを口にする。


「……げ」


相手を見て思わず日色は唸る。何故ならその中の一人から熱烈な視線を向けられていたからだ。


（おいおい、またあのニャンコ野郎かよ）


その相手はクロウチだ。ニヤニヤと口角を上げまくっているのだが、それが不気味過ぎて寒気がする。


「お？ こちらも来られたようですよ？」


そしてそこに現れた『魔族イビラ』陣営を見て、さすがのシウバも「え？」と言う感じで固まっていた。


何故なら明らかに数合わせのような兵士が二人いたからだ。《三獣士》たちも、その二人の顔と名前はもちろん知らなかった。


特にバリドなんかはハッキリとした殺気を日色にぶつけてくる。


「どういうことだ少年？」
「……何がだ？」
「惚けるな。あの者たちは隊長格でも、《クルーエル》の側近でもないだろう？」


完全に緊張してそわそわしている二人の兵士の姿を見て額に青筋を走らせる。


「どう見てもただの一般兵だ。この決闘が種族の命運が懸っていることを魔王は理解していないのか？」
「してるだろ」
「ふざけるな！ この一戦で貴様たちの運命が決まるのだぞ！ 負ければこちらの三勝で決闘は終わりだ！ そんな大事な決闘にたかが兵士二人だと！」


馬鹿にされていると感じているのか、それとも決闘を舐められていると感じているのか、顔を真っ赤に染めながら怒声を浴びせてくる。


「はぁ、別にふざけてはいない。この二人で十分だと判断したから、事前にこの二人の名前を書いておいただけだ。まあ、オレの提案に魔王はひっくり返りそうになってたけどな」


そう、日色は自分が出る戦いは兵士でもいいと言った。下手にアクの強い奴がチーム内にいると面倒だったので、大人しい兵士をチームに入れるように提案したのだ。


無論魔王他全ての者が反対した。何せ国の一大事を決める決闘なのだ。少しでも勝利する確率を考えると強者を加えた方が良いに決まっていた。


だが日色は断固として兵士を所望した。そうしなければ参加しないとも言った。その言葉に魔王イヴェアムは渋々頷くしかなかった。


「……ということはだ、その弱卒を加えただけのチームで、我ら三人を相手にできるとでも言うのか？」
「そういうことだ」


淡白にそう言うと、ギリッと歯を噛み締めたバリドは


「ほほう、後悔させてやろう。その提案をした貴様も、本来部外者である『人間族ヒュマス』の提案を馬鹿みたいに了承した魔王もな！」


ギロリと睨みつけてくるので、日色の背後にいる兵士はその圧倒的な覇気で気圧されている。


「我々を舐めた代償は高くつくぞ！」
「……馬鹿にしないでほしい」
「ニャハハ！ ホントに面白いことばかりするニャねヒイロ……ううん、タロウ？」


バリド、プティスが喋った後、クロウチが口を開いたが、その言葉を聞いて日色は少し目を見開く。


「……気づいたのか？」
「ニャハハ……会いたかったニャ……」
「オレは会いたくなど無かったけどな。あとオレはヒイロだ。タロウは偽名だ」
「知ってるニャ。確認のために言っただけニャ」


楽しそうにニヤッと口元を歪めている。


「……しかしお前、あの時は力を使い果たして真っ白になってたが、どうやら体調は万全のようだな？」
「お蔭様でニャ。それにニャ、今のこの姿だって、元々僕の力で作り上げているだけニャのニャ」
「…………ということは本来の姿はアッチか？」


白い姿の方がクロウチの正体らしい。


「そうニャ。ニャんでこんな格好してるかというとニャ」
「ああ別に興味無いからどうでもいい」
「ニャんとっ！？」


日色にあっさりと拒否られガックリと肩を落とす。そしてクロウチの身長が徐々に縮んでいき、黒い毛も真っ白くなっていく。


そして涙目で指を突きつけて叫び出す。


「これはニャ！ 僕の名前がクロウチって言うのと、貫録をつけるためにカッコ良い大人の男の格好をしてただけニャッ！」


説明を求めていないのに勝手に喋り出した白い幼女に対して溜め息を漏らす。


「……あっそ」
「ニャんでそんな興味がニャいニャァァァァァァァッ！」


頭を抱えてパニックに陥る白髪の幼女。確かにどこからどう見ても、先程の黒豹のような威圧感は感じられなかった。


まるで白い猫が擬人化したようなその姿は、ただ…………


「ノフォフォフォフォ！ これは何とも可愛らしいお姿です！ ついつい熱き抱擁をしたくなりますなぁ！ ノフォフォフォフォ！」


変態を呼び寄せるだけだった。


「どうでもいいからさっさと始めろ変態執事」
「これはまた手厳しいお言葉！ ノフォフォフォフォ！」


相変わらずのシウバに溜め息しか出ない。だが一つ咳をした後、キリッとした表情を浮かべる。


「では、準備はよろしいでございますか？」


日色とバリドは頷きを示す。


「まずは双方参加者の確認でございます」


そうしてシウバが名前を呼び上げて、それぞれが返事をする。


「次に王の確認でございます。『獣人族ガブラス』陣営はバリド様。『魔族イビラ』陣営はヒイロ様。間違いございませんね？」


またも二人が首を縦に振る。


「それでは、第三回戦…………始めっ！」


すると弾かれたようにクロウチが飛び出し、日色を襲撃しようとする。しかし、


「うぐぅっ！？」


突然クロウチが地面に向かって押し潰されているかのように張り付く。地面にはヒビが入り、彼女は必死に動こうとするが自由がきかない。


「ニャ……ニャにが……っ！？」


無論彼女の状態は日色が生み出したものだ。いつの間にか右手の人差し指の先には『重力』という文字が刻まれていた。


その文字の効果は、重力を操ることができるというものだ。向かって来るクロウチに対して、彼女の周りの重力を十倍以上に負荷をかけた。


「クロウチッ！」


バリドが叫ぶが、


「こ……こうニャったらぁぁ……」


するとクロウチの影が広がり、そのまま影に吸い込まれていく感じで体が消えていく。半分以上体が埋まったところを確認すると、


「それを待ってたんだ」


日色はその影に向かって『拘束』という文字を放つ。バチバチという放電現象が起きると、ピタッとクロウチが沈むのが止まる。


「ニャッ！？ う、動けニャいニャァァァァッ！」


両手両足がまるで影に引き摺り込まれて拘束されているかのようにビクともしない。日色は『重力』の効果を解くと、ゆっくりとクロウチの傍まで歩いて行き、


「……まず一人目」


バリドとプティスを見つめる。あっさりと動きを奪われたクロウチを目にして、二人の警戒心は最大限になる。


「気を抜くなプティス！ やはりあの少年は脅威だ！」
「……わかった」


熊の着ぐるみを着たプティスの頭がコクンと動いた。


日色は『発光』の文字を使い、周囲に目を覆うほどの発光現象を生み出した。


咄嗟に二人はほぼ同時に距離をとるために後ろにジャンプするが、プティスは着地した瞬間に足元の違和感を感じてギョッとなる。


「動けないだろ？」


日色はすかさず地面に向けて『粘着』という文字を放っていた。これでプティスの足元の地面は鳥モチのように変化して動きを奪った。


「……っ！？」


先程の光はこれを仕込むための目眩ましだったのかと悔しさに拳を握る。


「……これで二人目」


そうして地面に着地せずに空を飛んでいるバリドを見上げる。


「くっ！ ならばこちらも本気で！」


バリドが顔を強張らせて日色に攻撃をしようとした時、


ガシッ……


突然背後から頭を掴まれた。


「い……いつの間に……いや、それよりも……」


バリドは眼下に意識を向けるとそこには間違いなく日色がいた。ならば背後にいるのは誰なのか気になるのも当然だ。しかし、


「お前で三人目だ」


日色の声が背後から耳に入って来た。そしてバリドは驚愕に表情を歪めながらも、体から力が抜けていき、闇へと意識を沈めていった。







日色がしたことは実に簡単な事だった。各個撃破を考えていた日色は、まず手の内を知っているクロウチから仕留めようと考えた。


だから彼女が向かって来た瞬間に『重力』文字を使って、まず動きを制限させる。ただそれだけでは恐らく影を使う相手なので、相手はその中に潜り込むと考えた。


そのため潜り込む最中に『拘束』の文字を使って完全に動きを奪うことにした。そして次、残りの二人に目眩ましさせるために『発光』を使用する。だがここでプティスは、日色は『粘着』の文字を使って地面を鳥モチにしただけと思っているようだったが、実際はもう一つ行動していた。


それは以前ララシークの時にも使用した『影分身』だ。その場に分身体だけを残して、本体は『隠形』を使って気配を断ち、その場を離れて身を隠した。


『粘着』の効果で動きを止めることに成功した日色は、最後にバリドに視線を向けて注意を促した。無論これを行ったのは分身体である。


そして本体は『転移』の文字を使用して、すかさず彼の背後に迫り、頭を掴んで『気絶』を使い意識を奪ったということだ。


ハッキリ言ってこれは素早く行う必要のあった行動だった。何故ならば、幾ら『拘束』と『粘着』で他の二人の動きを止めているとは言っても、《転化》して手足の部分を切り取れば解放されるからだ。


そうなれば今度は慎重さを重視し、倒すのが面倒になる可能性が高い。だから日色は、一連の動きを素早く行ったのだ。


実際こうも上手くいったことに少しは驚いていたが、奇しくも参加者全員がほぼ無傷で勝利といった、イヴェアムが手を上げて喜びそうな結果になった。


だが間違いなくこの勝負は、


「第三回戦は『魔族イビラ』の勝利です！」


日色の圧勝だった。

Kết quả (Việt) 1:

"Oh của tôi? Nó có vẻ đi kèm với nó? 」 Silva đến trong ngày hôm sau, vòng 3: "con thú-người đàn ông loại gabranth" để miệng.「…… Uốn cong. Với tôi, ngày của tôi với một grunt. Bởi vì từ một chiêm ngưỡng hăng hái được đạo diễn từ một trong số họ.(Hey, cũng tên khốn nyanko?!) Người đó prostrating. Grinning như điên lên các góc của miệng, nhưng nó là quá rùng rợn, lạnh lẽo."Bạn? Có vẻ như để đến đây? 」 Và nhìn vào các "mazoku Ibra' trại bật lên đó, mặc dù Silva" eh? "Và nó đã được cứng. Bởi vì từ có hai số binh sĩ như vậy rõ ràng. "3 máy bay chiến đấu quái vật" không tất nhiên những hai khuôn mặt và tên. Đặc biệt là đến chống lại khát cho máu đã được rõ ràng ngày một cái gì đó hợp lệ."Cậu bé này là gì? 」「…… Nó là cái gì? 」Xem 惚keru. Những người đã là đội trưởng, trong đoàn tùy tùng của "tàn nhẫn" và cũng không nào? 」 Tại thị giác của hai binh sĩ hoàn toàn thần kinh và lo ngại, chạy các mạch máu trên trán."Mà trông giống như binh sĩ chỉ thường xuyên. Này đấu treo số phận của các bộ tộc không hiểu là ma quỷ? 」"Bạn có?""Đừng có ngớ ngẩn! Trong trận chiến này xác định số phận của những người! Nếu bạn mất với 3 thắng trận đấu này được thực hiện! Một trận đấu quan trọng bummed rằng hai binh sĩ! 」 Bravo đến cảm thấy một lừa hoặc cảm giác bị đánh giá thấp, đấu hoặc đỏ mặt đỏ ửng với sân bay."Những câu chuyện đùa sang một bên, và đã không. Tôi chỉ tên hai người đã viết về trước từ xác định hai người là đủ. Vâng, đề nghị của tôi là the devil trên g-string lung lay là nhưng một " Và vì vậy ngày chiến đấu trong các binh sĩ cũng nói. Nó được đề nghị để mạnh AK người trong đội và là các binh sĩ một chút yên tĩnh vào đội. Tất nhiên chống lại vua tất cả mọi thứ khác. Nó là một trận đấu để quyết định vấn đề lớn của các quốc gia sau khi tất cả. Thêm mạnh mẽ cho cơ hội để giành chiến thắng thậm chí một chút tốt hơn để biết. Nhưng ngày vững chắc, những người mong muốn các binh sĩ. Nó có thể nói không để tham gia nếu bạn không. Không có gì nhưng từ Satan bao giờ tôi miễn cưỡng gật đầu.「…… Nó nói chỉ của, bổ sung vào đội 弱卒, ba trong số chúng tôi có thể làm? 」"Đó." Răng 噛mi締meta hợp lệ với grit và nói như vậy ở đồng bằng「ほほう、後悔させてやろう。その提案をした貴様も、本来部外者である『人間族ヒュマス』の提案を馬鹿みたいに了承した魔王もな！」 ギロリと睨みつけてくるので、日色の背後にいる兵士はその圧倒的な覇気で気圧されている。「我々を舐めた代償は高くつくぞ！」「……馬鹿にしないでほしい」「ニャハハ！ ホントに面白いことばかりするニャねヒイロ……ううん、タロウ？」 バリド、プティスが喋った後、クロウチが口を開いたが、その言葉を聞いて日色は少し目を見開く。「……気づいたのか？」「ニャハハ……会いたかったニャ……」「オレは会いたくなど無かったけどな。あとオレはヒイロだ。タロウは偽名だ」「知ってるニャ。確認のために言っただけニャ」 楽しそうにニヤッと口元を歪めている。「……しかしお前、あの時は力を使い果たして真っ白になってたが、どうやら体調は万全のようだな？」「お蔭様でニャ。それにニャ、今のこの姿だって、元々僕の力で作り上げているだけニャのニャ」「…………ということは本来の姿はアッチか？」 白い姿の方がクロウチの正体らしい。「そうニャ。ニャんでこんな格好してるかというとニャ」「ああ別に興味無いからどうでもいい」「ニャんとっ！？」 日色にあっさりと拒否られガックリと肩を落とす。そしてクロウチの身長が徐々に縮んでいき、黒い毛も真っ白くなっていく。 そして涙目で指を突きつけて叫び出す。「これはニャ！ 僕の名前がクロウチって言うのと、貫録をつけるためにカッコ良い大人の男の格好をしてただけニャッ！」 説明を求めていないのに勝手に喋り出した白い幼女に対して溜め息を漏らす。「……あっそ」「ニャんでそんな興味がニャいニャァァァァァァァッ！」 頭を抱えてパニックに陥る白髪の幼女。確かにどこからどう見ても、先程の黒豹のような威圧感は感じられなかった。 まるで白い猫が擬人化したようなその姿は、ただ…………「ノフォフォフォフォ！ これは何とも可愛らしいお姿です！ ついつい熱き抱擁をしたくなりますなぁ！ ノフォフォフォフォ！」 変態を呼び寄せるだけだった。「どうでもいいからさっさと始めろ変態執事」「これはまた手厳しいお言葉！ ノフォフォフォフォ！」 相変わらずのシウバに溜め息しか出ない。だが一つ咳をした後、キリッとした表情を浮かべる。「では、準備はよろしいでございますか？」 日色とバリドは頷きを示す。「まずは双方参加者の確認でございます」 そうしてシウバが名前を呼び上げて、それぞれが返事をする。「次に王の確認でございます。『獣人族ガブラス』陣営はバリド様。『魔族イビラ』陣営はヒイロ様。間違いございませんね？」 またも二人が首を縦に振る。「それでは、第三回戦…………始めっ！」 すると弾かれたようにクロウチが飛び出し、日色を襲撃しようとする。しかし、「うぐぅっ！？」 突然クロウチが地面に向かって押し潰されているかのように張り付く。地面にはヒビが入り、彼女は必死に動こうとするが自由がきかない。「ニャ……ニャにが……っ！？」 無論彼女の状態は日色が生み出したものだ。いつの間にか右手の人差し指の先には『重力』という文字が刻まれていた。 その文字の効果は、重力を操ることができるというものだ。向かって来るクロウチに対して、彼女の周りの重力を十倍以上に負荷をかけた。「クロウチッ！」 バリドが叫ぶが、「こ……こうニャったらぁぁ……」 するとクロウチの影が広がり、そのまま影に吸い込まれていく感じで体が消えていく。半分以上体が埋まったところを確認すると、

「それを待ってたんだ」


日色はその影に向かって『拘束』という文字を放つ。バチバチという放電現象が起きると、ピタッとクロウチが沈むのが止まる。


「ニャッ！？ う、動けニャいニャァァァァッ！」


両手両足がまるで影に引き摺り込まれて拘束されているかのようにビクともしない。日色は『重力』の効果を解くと、ゆっくりとクロウチの傍まで歩いて行き、


「……まず一人目」


バリドとプティスを見つめる。あっさりと動きを奪われたクロウチを目にして、二人の警戒心は最大限になる。


「気を抜くなプティス！ やはりあの少年は脅威だ！」
「……わかった」


熊の着ぐるみを着たプティスの頭がコクンと動いた。


日色は『発光』の文字を使い、周囲に目を覆うほどの発光現象を生み出した。


咄嗟に二人はほぼ同時に距離をとるために後ろにジャンプするが、プティスは着地した瞬間に足元の違和感を感じてギョッとなる。


「動けないだろ？」


日色はすかさず地面に向けて『粘着』という文字を放っていた。これでプティスの足元の地面は鳥モチのように変化して動きを奪った。


「……っ！？」


先程の光はこれを仕込むための目眩ましだったのかと悔しさに拳を握る。


「……これで二人目」


そうして地面に着地せずに空を飛んでいるバリドを見上げる。


「くっ！ ならばこちらも本気で！」


バリドが顔を強張らせて日色に攻撃をしようとした時、


ガシッ……


突然背後から頭を掴まれた。


「い……いつの間に……いや、それよりも……」


バリドは眼下に意識を向けるとそこには間違いなく日色がいた。ならば背後にいるのは誰なのか気になるのも当然だ。しかし、


「お前で三人目だ」


日色の声が背後から耳に入って来た。そしてバリドは驚愕に表情を歪めながらも、体から力が抜けていき、闇へと意識を沈めていった。







日色がしたことは実に簡単な事だった。各個撃破を考えていた日色は、まず手の内を知っているクロウチから仕留めようと考えた。


だから彼女が向かって来た瞬間に『重力』文字を使って、まず動きを制限させる。ただそれだけでは恐らく影を使う相手なので、相手はその中に潜り込むと考えた。


そのため潜り込む最中に『拘束』の文字を使って完全に動きを奪うことにした。そして次、残りの二人に目眩ましさせるために『発光』を使用する。だがここでプティスは、日色は『粘着』の文字を使って地面を鳥モチにしただけと思っているようだったが、実際はもう一つ行動していた。


それは以前ララシークの時にも使用した『影分身』だ。その場に分身体だけを残して、本体は『隠形』を使って気配を断ち、その場を離れて身を隠した。


『粘着』の効果で動きを止めることに成功した日色は、最後にバリドに視線を向けて注意を促した。無論これを行ったのは分身体である。


そして本体は『転移』の文字を使用して、すかさず彼の背後に迫り、頭を掴んで『気絶』を使い意識を奪ったということだ。


ハッキリ言ってこれは素早く行う必要のあった行動だった。何故ならば、幾ら『拘束』と『粘着』で他の二人の動きを止めているとは言っても、《転化》して手足の部分を切り取れば解放されるからだ。


そうなれば今度は慎重さを重視し、倒すのが面倒になる可能性が高い。だから日色は、一連の動きを素早く行ったのだ。


実際こうも上手くいったことに少しは驚いていたが、奇しくも参加者全員がほぼ無傷で勝利といった、イヴェアムが手を上げて喜びそうな結果になった。


だが間違いなくこの勝負は、


「第三回戦は『魔族イビラ』の勝利です！」


日色の圧勝だった。