ギリスロン、25の日の早朝。 日色は誰よりも早く目を覚ましたので、昨日よりも冷え込んでいる空気の中、また『温感』の文字を使って、森の中を散歩 dịch - ギリスロン、25の日の早朝。 日色は誰よりも早く目を覚ましたので、昨日よりも冷え込んでいる空気の中、また『温感』の文字を使って、森の中を散歩 Việt làm thế nào để nói

ギリスロン、25の日の早朝。 日色は誰よりも早く目を覚ましたので、昨日

ギリスロン、25の日の早朝。


日色は誰よりも早く目を覚ましたので、昨日よりも冷え込んでいる空気の中、また『温感』の文字を使って、森の中を散歩していた。


すると一本の木をジッと見つめている少女がいた。アルリエンだ。その横顔は浮かない表情であり、その理由を分かっている日色は黙って見ていた。


「……あら? ごめんなさい。もしかして探しに来てくれたのかしら?」


少し目が赤い。もしかしたら泣いていたのかもしれない。だが彼女は笑顔を作り、おどけた感じで言葉を発する。


「オレはただ散歩をしていただけだ」


ぶっきらぼうにそう言うと、彼女はクスリと笑って、すぐに真面目な顔を向けてくる。


「聞いてもいいかしら?」
「何だ?」
「……どうして君はそんなにも《ニジヒカリ》のことに詳しいの?」
「別に本で得た知識なだけだ」
「あたしもいろいろ調べたけど、《転性》なんて初めて聞いたわ」
「ならお前の調査不足なだけだろ」


実際はチート能力を使って調べたましたとは言わない。


それ以上、この件について話すつもりはないと言った感じの日色を見て、


「……あはは、じゃああたしは運が良かったのね」
「……?」
「だって、君に出会えたからこうしてまだ望みを捨てられないでいる」
「…………」
「こんなにも早く《ニジヒカリ》を見つけられたのも君の奇妙な魔法のお蔭。それに《ニジヒカリ》に花が咲く可能性を教えてくれたのも……だからとても感謝してるわ。ありがとう」


アルリエンは優しく微笑むと、手を差し出してきた。握手を求めているようだ。だが日色は別段感謝されるようなことをした覚えは無い。


「礼はまだ早いんじゃないか。まだお前の望みは叶ってはいないだろ? それに情報を教えたのは単なる気まぐれだ」
「……それでも、あたしは感謝してるわ。今日あの子の運命が決まるけど、あたしは信じてる」


拳をギュッと力強く握る。


「あたしにはもう信じるしかできないから。だから信じるわ。きっとキセキは起こるって」
「…………好きにすればいい」


それだけ言うとその場を去ろうとする。すると背中越しにアルリエンから声が届く。


「ねえ、ヒイロ……って呼んでいい?」
「…………好きにすればいい」




皆が起き出すと、さっそく《ニジヒカリ》がある場所へと皆で向かって行った。


やはり昨日と変わらない《ニジヒカリの樹》であり、花も蕾も何も見当たらなかった。これで本当に《転性》が起きれば夜に花を開かせるのかと思ったが、今考えても仕方が無い。それよりも警戒すべきことがあるので周囲を確認することにした。


昨日襲ってきたサウザンドホークの件だ。パーティの最中に襲って来られるとハッキリ言って面倒だ。


岩山に登り空を見上げるが、魔物らしき気配はしない。近くを確認してみてもサウザンドホークはいないようだ。


(もうここを去って行ったのか……?)


考え込んでいると、


「師匠! くりすとますつでぃというやつを教えてほしいですぞ!」


《クリスマスツリー》の飾りつけを教えてほしいらしい。とは言っても日色自身、児童養護施設で飾り付けをした経験はあるが、あの時は折り紙を折って、それを飾り付けただけの質素なものだった。


電飾も少しはあったが、これほど大きな樹を相手に見栄えを整えられるほどの電飾がここにあるとは思えない。


「とりあえず、好きな物を飾ればいいだろ。光を反射するようなものならなおいい。あと《クリスマスツリー》だ」


日色の言葉を聞いて、ニッキとミカヅキは自分の持っている袋の中を漁り出した。


「これなんてどうですかな?」


ニッキはミカヅキにツルツルした石を見せつける。


「む~ミカヅキだっていろいろもってるも~ん!」


そう言って取り出したのは、白い毛を先に宿した筆だった。これは以前、シウバに買ってもらったものだった。


「あはは! それは光を反射などしないですぞ! ミカヅキはお馬鹿ですなぁ!」


楽しそうに笑うニッキを見て、ミカヅキがぷく~っと膨れる。


「いいもん! これからい~っぱいみつけるもん!」


そう言って洞窟へと入って行った。


「あ、ずるいですぞ! ボクだって負けないですぞ!」


そう言ってミカヅキの後を追って行った。


「……ん? 赤ロリはどうした?」


周囲を見回してみると、先程までここにいたリリィンがいなかった。


「え、えとえと、そ、それはですね……」


何だか挙動不審にシャモエがあわあわとしている。どうやら何かを隠しているようだ。彼女の視線の先を追ってみると、岩山の上にリリィンが座っていた。


「……何をしてるんだアイツは?」
「あ、その、えっと……で、できればその……そっとしてあげてほしいのですが……」


彼女の言葉でリリィンが何かをしていることは確実なのだが、大して興味は無かったので、追及はせずに視線をシウバが出した長椅子に寝ているシュノに向けた。


その傍らには彼女の手を握っているアルリエンの姿もあった。一瞥いちべつするとニッキたちを追うように洞窟へと向かって行った。







思った以上に飾り付けは順調にいっていた。洞窟には水晶のような塊があり、それを砕いていろんな形にして樹に飾っていった。


他にも綺麗な石や、木を削って形を整えたものなど様々に彩られていく。そして時刻は刻一刻と夜へとカウントダウンされていく。


そして食事も出来上がり、空は漆黒に包まれ始めていた。星々が顔を出し、良いニオイが周囲を漂う中、それでも《ニジヒカリの樹》には全く反応が見当たらなかった。


アルリエンの表情は段々と陰りを帯び始め、日が完全に沈んでからはもう一言も喋らなかった。そのいたたまれない様子で、シュノの手を握る彼女に、誰も言葉をかけなかった。


日色もそんな彼女を見ながら空を見上げていた。


(少し曇ってるな……)


月が見当たらないので雲に隠れていることは容易に想像できた。


「さあさあ、皆様! 食事の用意ができました!」


シウバの出した机の上には豪華で美味そうな食事が幾つも用意されていた。日色は思わず頬が緩むが、ニッキとミカヅキとシャモエは何故か暗い表情をしている。


理由を聞くと、どうやら思ったより飾り付けた樹が、日色から聞いたように美しい光に彩られているわけではないことに残念がっているようだ。


それも仕方の無い話だ。何といっても電飾が無いのだから。飾り付けた光を反射する物々も、月の光が届いていないので暗いままだ。


どうも空気が重い。食事は美味そうだが、こんな空気では、せっかくの食事も雰囲気のせいで悪くなってしまう。


するとそこにリリィンが近づいてくる。


「何だこの雰囲気は?」
「何だ赤ロリ、昨日からしていた用事は終わったのか?」
「うっ! な、何故それを知っている!?」


顔を真っ赤にして驚愕している。


「お前な、アレで隠し通せてると本気で思ってたのか?」


一人でどこかへ行き、食事の時にしか姿を見せず、またどこかへ行く。そんな様子を見れば誰もが何かをしていると気づくのも当然だ。


「ふ、ふん! べ、別に貴様には関係無いわ!」
「あっそ」


淡白にそう返すと、ムッと頬を膨らませて睨みつけてくる。


「シュノッ!」


突然叫び声が聞こえた。声の持ち主はアルリエンだ。


「ああ……どんどん硬くなっていくわっ!」


見てみると、まだ普通の肌だったシュノの顔が、徐々に岩のようになっていく。アルリエンは涙を流しながら叫び続ける。


「お願いっ!」


そして両手を組んで《ニジヒカリ》に向かって祈り始めた。


「お願いしますっ! どうか! どうか光を……光を下さいっ!」


その場にいた全員が息を飲むほど、その叫びは周囲に激しく響く。


だが無情にもウンともスンとも反応しない《ニジヒカリ》を見て、ただただ涙を流すだけだ。


「何でもします……何でもしますから……妹を……シュノを助けてっ!」


悲痛なその叫びを聞いて、シウバはそっと日色に近づいてきた。


「ヒイロ様」
「ジイサンの言いたいことは分かる。治せって言うんだろ?」
「…………」


沈黙は肯定の証だった。


「……はぁ、なら少しだけ手助けしてやる。いつまでもこんな空気のままはしんどいからな」


そう言って、『晴れ』という文字を書いて指先を上空へと向けた。文字の発動により、徐々に無数の星が浮き出てきた。


日色は岩山に登ると、今も尚両手を組んで祈っているアルリエンに向かって言う。


「おいカチューシャ、本当にキセキを信じているか?」


すると肩をピクリと動かして、


「……え?」
「お前はキセキを信じると言った。その思い、今もまだ持ち続けてるか?」
「……ぼぢろんよっ!」


涙を盛大に流しながら必死で叫んだため、聞き取り辛かったが、彼女の意思は伝わった。


「ならほんの少しだけ、オレがそのキセキを起こす後押しをしてやる」


日色の顔が、徐々に表れた月の光によって照らされていく。そしてその光は、《ニジヒカリの樹》も照らし始めた。


「……満月の光」
「……え?」
「満月の光が《転性》が起こるための条件だ」
「そ、それじゃ……」


期待の目を向けてくるアルリエン。


「だが、あくまでも《転性》が起きるかどうかは運次第だ。必ずそれが起こるとは決まっていない。後はもう……祈るだけだ」


皆がジッと見守る中、飾り付けのお蔭で光を反射してキラキラ光っている《ニジヒカリ》。


だがまだ何も起こらない。少しずつ絶望の色に顔を染めていくアルリエン。だが頭を振ると、キリッとした顔つきで《ニジヒカリ》を見つめていた。


そして………………………………………………










………………………………枝から蕾が顔を出した。







その蕾が成長し、花を開かせる。どんどん花で埋め尽くされていく《ニジヒカリ》。


そう、キセキは起きたのだ。


そしてその花の中心から、ぷく~っとシャボン玉のようなものが出現する。


「なるほどな。アレが《ニジヒカリの果実》、通称《シャボン餅もち》か」


虹色に輝く無数の《シャボン餅》。しかも驚いたことに、それはまるで《クリスマスツリー》の電飾代わりとなって、辺りを鮮やかな光で包み込んでいる。


「す、すっごいですぞぉ!」
「きれぇ~い! クイ~!」
「ふぇぇぇぇ……お綺麗なのですぅ」


ニッキもミカヅキも満開の笑顔で喜んでいる。シャモエもうっとりとして眺めている。


「ノフォフォフォフォ! これはこれは、お美しい光景ですなぁ! ノフォフォフォフォ!」
「ふむ、確かに見事だ」


リリィンも満足気に頷いている。


「ありがとうございます! ありがとうございます!」
「良かったな信じて」


日色の言葉を受けたアルリエンは、大きく頷くと、すぐさま《シャボン餅》を取って、シュノに食べさせようとする。だがモチモチとしている《シャボン餅》は、病人には食べ辛いことこの上ない。


「お願いします! コレを蒸してほしいんです! できますか!」


シウバに向かって言うと、ニッコリと笑った彼は


「もちろんでございます」


影から調理器具を出すと、蒸すための用意をしていく。


アルリエン曰く、蒸すと餅自体が溶け始め、それが液体状に姿を変えるとのことだ。そうすれば体内に入れやすくなる。


ちょうど掌サイズの餅をコップの上に乗せて、セイロで蒸していく。


「早く……早く……お願いっ!」


アルリエンの祈りの中、ようやく蒸し上がったのか、蓋を開けてみると、コップには液状のものが収まっていた。それをスープ皿に移し、スプーンで掬ってシュノの口元へと運び……


ゴク……


確かにシュノの喉が鳴った。そして、進行していた病がピタッと止まり、閉じていた目をシュノはうっすらと開けた。


「シュノッ!」
「……お……ねえ……ちゃ」


アルリエンは力一杯抱擁した。


「よがっだぁぁぁぁっ! よがっだよぉぉぉぉぉぉぉっ!」


盛大に涙を流して喜ぶ。


「危機一髪というところでしょうか」


シウバもホッと胸を撫で下ろす。しかしその時、
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ギリスロン、25の日の早朝。 日色は誰よりも早く目を覚ましたので、昨日よりも冷え込んでいる空気の中、また『温感』の文字を使って、森の中を散歩していた。 すると一本の木をジッと見つめている少女がいた。アルリエンだ。その横顔は浮かない表情であり、その理由を分かっている日色は黙って見ていた。「……あら? ごめんなさい。もしかして探しに来てくれたのかしら?」 少し目が赤い。もしかしたら泣いていたのかもしれない。だが彼女は笑顔を作り、おどけた感じで言葉を発する。「オレはただ散歩をしていただけだ」 ぶっきらぼうにそう言うと、彼女はクスリと笑って、すぐに真面目な顔を向けてくる。「聞いてもいいかしら?」「何だ?」「……どうして君はそんなにも《ニジヒカリ》のことに詳しいの?」「別に本で得た知識なだけだ」「あたしもいろいろ調べたけど、《転性》なんて初めて聞いたわ」「ならお前の調査不足なだけだろ」 実際はチート能力を使って調べたましたとは言わない。 それ以上、この件について話すつもりはないと言った感じの日色を見て、「……あはは、じゃああたしは運が良かったのね」「……?」「だって、君に出会えたからこうしてまだ望みを捨てられないでいる」「…………」「こんなにも早く《ニジヒカリ》を見つけられたのも君の奇妙な魔法のお蔭。それに《ニジヒカリ》に花が咲く可能性を教えてくれたのも……だからとても感謝してるわ。ありがとう」 アルリエンは優しく微笑むと、手を差し出してきた。握手を求めているようだ。だが日色は別段感謝されるようなことをした覚えは無い。「礼はまだ早いんじゃないか。まだお前の望みは叶ってはいないだろ? それに情報を教えたのは単なる気まぐれだ」「……それでも、あたしは感謝してるわ。今日あの子の運命が決まるけど、あたしは信じてる」 拳をギュッと力強く握る。「あたしにはもう信じるしかできないから。だから信じるわ。きっとキセキは起こるって」「…………好きにすればいい」 それだけ言うとその場を去ろうとする。すると背中越しにアルリエンから声が届く。「ねえ、ヒイロ……って呼んでいい?」「…………好きにすればいい」 皆が起き出すと、さっそく《ニジヒカリ》がある場所へと皆で向かって行った。 やはり昨日と変わらない《ニジヒカリの樹》であり、花も蕾も何も見当たらなかった。これで本当に《転性》が起きれば夜に花を開かせるのかと思ったが、今考えても仕方が無い。それよりも警戒すべきことがあるので周囲を確認することにした。

昨日襲ってきたサウザンドホークの件だ。パーティの最中に襲って来られるとハッキリ言って面倒だ。


岩山に登り空を見上げるが、魔物らしき気配はしない。近くを確認してみてもサウザンドホークはいないようだ。


(もうここを去って行ったのか……?)


考え込んでいると、


「師匠! くりすとますつでぃというやつを教えてほしいですぞ!」


《クリスマスツリー》の飾りつけを教えてほしいらしい。とは言っても日色自身、児童養護施設で飾り付けをした経験はあるが、あの時は折り紙を折って、それを飾り付けただけの質素なものだった。


電飾も少しはあったが、これほど大きな樹を相手に見栄えを整えられるほどの電飾がここにあるとは思えない。


「とりあえず、好きな物を飾ればいいだろ。光を反射するようなものならなおいい。あと《クリスマスツリー》だ」


日色の言葉を聞いて、ニッキとミカヅキは自分の持っている袋の中を漁り出した。


「これなんてどうですかな?」


ニッキはミカヅキにツルツルした石を見せつける。


「む~ミカヅキだっていろいろもってるも~ん!」


そう言って取り出したのは、白い毛を先に宿した筆だった。これは以前、シウバに買ってもらったものだった。


「あはは! それは光を反射などしないですぞ! ミカヅキはお馬鹿ですなぁ!」


楽しそうに笑うニッキを見て、ミカヅキがぷく~っと膨れる。


「いいもん! これからい~っぱいみつけるもん!」


そう言って洞窟へと入って行った。


「あ、ずるいですぞ! ボクだって負けないですぞ!」


そう言ってミカヅキの後を追って行った。


「……ん? 赤ロリはどうした?」


周囲を見回してみると、先程までここにいたリリィンがいなかった。


「え、えとえと、そ、それはですね……」


何だか挙動不審にシャモエがあわあわとしている。どうやら何かを隠しているようだ。彼女の視線の先を追ってみると、岩山の上にリリィンが座っていた。


「……何をしてるんだアイツは?」
「あ、その、えっと……で、できればその……そっとしてあげてほしいのですが……」


彼女の言葉でリリィンが何かをしていることは確実なのだが、大して興味は無かったので、追及はせずに視線をシウバが出した長椅子に寝ているシュノに向けた。


その傍らには彼女の手を握っているアルリエンの姿もあった。一瞥いちべつするとニッキたちを追うように洞窟へと向かって行った。







思った以上に飾り付けは順調にいっていた。洞窟には水晶のような塊があり、それを砕いていろんな形にして樹に飾っていった。


他にも綺麗な石や、木を削って形を整えたものなど様々に彩られていく。そして時刻は刻一刻と夜へとカウントダウンされていく。


そして食事も出来上がり、空は漆黒に包まれ始めていた。星々が顔を出し、良いニオイが周囲を漂う中、それでも《ニジヒカリの樹》には全く反応が見当たらなかった。


アルリエンの表情は段々と陰りを帯び始め、日が完全に沈んでからはもう一言も喋らなかった。そのいたたまれない様子で、シュノの手を握る彼女に、誰も言葉をかけなかった。


日色もそんな彼女を見ながら空を見上げていた。


(少し曇ってるな……)


月が見当たらないので雲に隠れていることは容易に想像できた。


「さあさあ、皆様! 食事の用意ができました!」


シウバの出した机の上には豪華で美味そうな食事が幾つも用意されていた。日色は思わず頬が緩むが、ニッキとミカヅキとシャモエは何故か暗い表情をしている。


理由を聞くと、どうやら思ったより飾り付けた樹が、日色から聞いたように美しい光に彩られているわけではないことに残念がっているようだ。


それも仕方の無い話だ。何といっても電飾が無いのだから。飾り付けた光を反射する物々も、月の光が届いていないので暗いままだ。


どうも空気が重い。食事は美味そうだが、こんな空気では、せっかくの食事も雰囲気のせいで悪くなってしまう。


するとそこにリリィンが近づいてくる。


「何だこの雰囲気は?」
「何だ赤ロリ、昨日からしていた用事は終わったのか?」
「うっ! な、何故それを知っている!?」


顔を真っ赤にして驚愕している。


「お前な、アレで隠し通せてると本気で思ってたのか?」


一人でどこかへ行き、食事の時にしか姿を見せず、またどこかへ行く。そんな様子を見れば誰もが何かをしていると気づくのも当然だ。


「ふ、ふん! べ、別に貴様には関係無いわ!」
「あっそ」


淡白にそう返すと、ムッと頬を膨らませて睨みつけてくる。


「シュノッ!」


突然叫び声が聞こえた。声の持ち主はアルリエンだ。


「ああ……どんどん硬くなっていくわっ!」


見てみると、まだ普通の肌だったシュノの顔が、徐々に岩のようになっていく。アルリエンは涙を流しながら叫び続ける。


「お願いっ!」


そして両手を組んで《ニジヒカリ》に向かって祈り始めた。


「お願いしますっ! どうか! どうか光を……光を下さいっ!」


その場にいた全員が息を飲むほど、その叫びは周囲に激しく響く。


だが無情にもウンともスンとも反応しない《ニジヒカリ》を見て、ただただ涙を流すだけだ。


「何でもします……何でもしますから……妹を……シュノを助けてっ!」


悲痛なその叫びを聞いて、シウバはそっと日色に近づいてきた。


「ヒイロ様」
「ジイサンの言いたいことは分かる。治せって言うんだろ?」
「…………」


沈黙は肯定の証だった。


「……はぁ、なら少しだけ手助けしてやる。いつまでもこんな空気のままはしんどいからな」


そう言って、『晴れ』という文字を書いて指先を上空へと向けた。文字の発動により、徐々に無数の星が浮き出てきた。


日色は岩山に登ると、今も尚両手を組んで祈っているアルリエンに向かって言う。


「おいカチューシャ、本当にキセキを信じているか?」


すると肩をピクリと動かして、


「……え?」
「お前はキセキを信じると言った。その思い、今もまだ持ち続けてるか?」
「……ぼぢろんよっ!」


涙を盛大に流しながら必死で叫んだため、聞き取り辛かったが、彼女の意思は伝わった。


「ならほんの少しだけ、オレがそのキセキを起こす後押しをしてやる」


日色の顔が、徐々に表れた月の光によって照らされていく。そしてその光は、《ニジヒカリの樹》も照らし始めた。


「……満月の光」
「……え?」
「満月の光が《転性》が起こるための条件だ」
「そ、それじゃ……」


期待の目を向けてくるアルリエン。


「だが、あくまでも《転性》が起きるかどうかは運次第だ。必ずそれが起こるとは決まっていない。後はもう……祈るだけだ」


皆がジッと見守る中、飾り付けのお蔭で光を反射してキラキラ光っている《ニジヒカリ》。


だがまだ何も起こらない。少しずつ絶望の色に顔を染めていくアルリエン。だが頭を振ると、キリッとした顔つきで《ニジヒカリ》を見つめていた。


そして………………………………………………










………………………………枝から蕾が顔を出した。







その蕾が成長し、花を開かせる。どんどん花で埋め尽くされていく《ニジヒカリ》。


そう、キセキは起きたのだ。


そしてその花の中心から、ぷく~っとシャボン玉のようなものが出現する。


「なるほどな。アレが《ニジヒカリの果実》、通称《シャボン餅もち》か」


虹色に輝く無数の《シャボン餅》。しかも驚いたことに、それはまるで《クリスマスツリー》の電飾代わりとなって、辺りを鮮やかな光で包み込んでいる。


「す、すっごいですぞぉ!」
「きれぇ~い! クイ~!」
「ふぇぇぇぇ……お綺麗なのですぅ」


ニッキもミカヅキも満開の笑顔で喜んでいる。シャモエもうっとりとして眺めている。


「ノフォフォフォフォ! これはこれは、お美しい光景ですなぁ! ノフォフォフォフォ!」
「ふむ、確かに見事だ」


リリィンも満足気に頷いている。


「ありがとうございます! ありがとうございます!」
「良かったな信じて」


日色の言葉を受けたアルリエンは、大きく頷くと、すぐさま《シャボン餅》を取って、シュノに食べさせようとする。だがモチモチとしている《シャボン餅》は、病人には食べ辛いことこの上ない。


「お願いします! コレを蒸してほしいんです! できますか!」


シウバに向かって言うと、ニッコリと笑った彼は


「もちろんでございます」


影から調理器具を出すと、蒸すための用意をしていく。


アルリエン曰く、蒸すと餅自体が溶け始め、それが液体状に姿を変えるとのことだ。そうすれば体内に入れやすくなる。


ちょうど掌サイズの餅をコップの上に乗せて、セイロで蒸していく。


「早く……早く……お願いっ!」


アルリエンの祈りの中、ようやく蒸し上がったのか、蓋を開けてみると、コップには液状のものが収まっていた。それをスープ皿に移し、スプーンで掬ってシュノの口元へと運び……


ゴク……


確かにシュノの喉が鳴った。そして、進行していた病がピタッと止まり、閉じていた目をシュノはうっすらと開けた。


「シュノッ!」
「……お……ねえ……ちゃ」


アルリエンは力一杯抱擁した。


「よがっだぁぁぁぁっ! よがっだよぉぉぉぉぉぉぉっ!」


盛大に涙を流して喜ぶ。


「危機一髪というところでしょうか」


シウバもホッと胸を撫で下ろす。しかしその時、
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