雨、止まないわねー」 夕方から降り続く雨に少々ウンザリしながら、 美琴

雨、止まないわねー」



夕方から降り続く雨に少々ウンザリしながら、
美琴はソファの上でつまらなさそうに、一人ごちた。

「雨は嫌いですの？」

完全に独り言のつもりであったのにまさか言葉が返って来るとは思わず、
美琴は顔を埋めていたクッションから身を起こし、
声のする方向へと体を向けた。

「嫌いじゃないけどさ。つまんないじゃん」
「確かに、あまり雨が続くと少々気が滅入りますわね」

どうぞ、と言いながら声の主はマグカップを差し出すと、
自らもまたカップを携え美琴の向かい側へと腰を下ろす。

「ありがと」

自分がいつも使っているオレンジ色のマグカップを受け取ると、
美琴は注がれた紅茶をゆっくりと口に含み、
いつものベルガモットの風味を堪能した。
この部屋のこのソファで、家主が美琴の好みに合わせて振る舞ってくれる紅茶を楽しむ、
ゆっくりとした時間が、美琴はとてもお気に入りだった。



「先生、お酒飲むんだ」

ミルクティが飲みたくなり、家主に断りを入れミルクを探す為に
冷蔵庫を開けた美琴は、
綺麗に片づけられた冷蔵室の奥にある
カクテルの缶に目を留めた。

「嗜む程度ですけれど」

先生、と呼ばれた人物、白井黒子は美琴のクラスの担任であった。
ある時、雨宿りがてら美琴を家に招き入れた事がきっかけで、
また、美琴の両親が海外赴任中の為一人暮らしをしている事もあり、
以来、美琴は何かと白井の家に遊びに来る事が多くなった。
当初は教師の家に入り浸る事にやんわりと注意を促した白井だったが、
勉強を教えて欲しい、と頼まれれば断る訳にもいかず、
結局はそのまま夕食を食べて帰る、と言うのが大抵のパターンとなっていた。
尤も、白井が付きっきりで教えなくとも美琴の成績は常にトップクラスであったけれども。

「どんな時に飲むの？お酒」

小柄な見た目と丁寧な口調から、何となく白井に対してアルコールのイメージが無かった美琴は
ジュースと見間違うようなそのカラフルな缶をくるくると眺めながら、
ふと浮かんだ何気ない疑問を投げかける。

「大人には、そう言う気分の時がありますのよ」
「飲みたいくらい、イヤな事があるって事？」
「そう言う訳ではありませんけど」

美琴の質問にどう答えるべきか、困ったように笑う白井に対し、
何か思う部分があったのか、美琴は缶を弄っていた手をふと止め、
じっとラベルを見つめながら、ぽつりと呟いた。

「……頼ってよ」
「え？」
「何かイヤな事があったらさ、私に話してよ。話、聞くくらいなら出来るし」
「……教師が教え子に、頼るんですの？例えそうだったとしてもそんな事出来ませんの」

突然の美琴の言葉に白井は一瞬言葉を詰まらせるが、何故美琴が突然そんな事を言ったのか。
敢えて深くは追及せず、断りの意を籠めて一般的な答えを返す。
けれども。

「先生はさ。私の事、どう思ってるの」
「……どう、とは？」
「文字通り、そのままの意味で」

いきなり頼れ、と言われたと思えば今度は何を言い出すのだろう、と。
相変わらずの真意の探れない言葉に、そして明らかにいつもと違う様子の美琴に
白井は手元のマグカップを持つ手に力を籠め、何とか弾きだした答えを述べる為
ゆっくりと口を開いた。

「御坂さんは、成績も良くて、人望も厚くて、優しくて。時々困った事もしますけど……わたくしの自慢の教え子ですわ」
「そうじゃなくて、さ」
「え、と……」

どうやら、と言うべきか案の定と言うべきか。
白井が何とか導き出した答えでは納得出来ないらしく、
どう答えればこの困った教え子は満足してくれるのだろうか、と。
半分ほど紅茶の減ったマグカップをじっと見つめ、白井は何も答える事が出来ず口を噤む。

「私は、先生の事。好きだよ」

その言葉が耳に届いた瞬間。
『好き』と言われたその瞬間。
低くもなく高くもなく、すうっと耳に吸い込まれるような心地良い声で、
そう、言葉を投げられた瞬間。
白井の心臓は大きく跳ねあがった。

「嬉しい事を言ってくれますのね？でもそれは、年上に抱く……所謂憧れと言うものですのよ」

平静を保って、何とかそう、言葉を返した。
返したつもりだった。
先程の美琴の告白に、息が詰まるほど動揺を隠せない自分がいる事に驚いて。
そんな自分を相手に知られたくなくて。
けれども、恐らく相手も自分が動揺している事に気付いているだろう、と。
最早、これ以上下手に言葉を返すのは危険だと、そう思ったから。
白井はカップに残った温い紅茶を飲み干すと、カラカラに乾いた口内を潤わせ再び口を噤んだ。

「嘘だ」
「……嘘、ですの？」
「先生は、私の気持ちに気付いてる」
「……」
「先生はさ、何で私を拒むの？」

美琴の言う通りであった。
いつからか、自分に対する美琴の視線が
『教師』に対するそれでは無い事に白井は気付いていた。
けれども、それは気付いてはいけない事であり。
そして認めてはいけない事だ、と。
そう、思っていたから。
仮に、認めざるを得ない状況に陥れば、それは拒まなくてはいけない、と。
自らに、そう言い聞かせていた事であった。
だから、改めて美琴から告げられた真実に対しても、
決して受け入れてはいけないのだ、と。
白井は美琴を拒む為の言葉を口にする。

「御坂さんとわたくしは……生徒と教師、ですから」
「それだけ？」
「年も……離れてますし」
「別にこれくらい離れてても変じゃないでしよ？」
「貴女とわたくしは……同性、ですのよ」

最後にそう、言葉を告げた白井は、これまで冷静に反論していた美琴が
急に黙ってしまった事に気が付くと、
下手な言い訳と気付かれていながらも
納得してもらえたのだろうか、と小さく安堵の溜息を吐いた。
けれども、少しの間の後。

「勝手だね」

そう、聞こえたと思い、顏を上げると先程まで向かいのソファに座っていた美琴が
側に立っていた事に気付き、
どれだけ自分が動揺し、周りに気が向いていなかったかを
知らされた。

「御坂、さん？」
「自分勝手だっての、先生は」
「……どういう」
「どの理由にも、先生自身の意思が籠もってないし。断り方が分かんないから何とか理由を付けて、私を拒もうとしてる」
「それは……」
「自分の気持ちを相手に伝えないで断ろうなんて、そんなの自分勝手と思わない？体裁を気にするがあまりのただの言い訳って」
「……」
「本当は拒む理由なんて無いんじゃないの？」

言われなくても気付いていた。
美琴が自分の事を慕ってくれているように、自分もまた、いつからか
美琴に対して特別な感情を抱いている事に。
けれども、白井自身、その感情の正体が何であるのか理解出来ておらず、
そしてまた、自分は教師であり、彼女は自分の教え子なのだから。
その正体が何であれ、特別な想いを抱く事は許される事では無い、と思ってたから。
だからこそ、ずっと、美琴からの想いに気付きながらも拒み続けていた。

「わたくしは……御坂さんの事が心配で、ご両親も不在だから……保護者の気持ちで接していただけで、
特別な感情を持っているならば、それは親心のような、ものですから……」

それは嘘では無かった。
面倒だから、と言って食事も簡単に済ませている美琴を見る度に。
クラスでも時々、寂しげな表情を浮かべている美琴を見る度に。
人望がある彼女だと思っていたが、実は人に騒がれるのはあまり好きでは無いのだ、と知った時から。
美琴の事が、どこかいつも心の奥で気になり続けていた。
そんな状況だったから、この特別な感情は美琴の言う『特別』では無いと思っていた。
けれども。

「ホントは私の事、気になって仕方ないんでしょ？そんなに動揺してるくせに」
「ち、ちが……きゃッ！」

まるで自分の気持ちを包んでいたオブラートが一枚ずつ剥がされ、
最後の一枚に手をかけられた、そんな感覚に陥った時。

「先生、可愛い」

そう、美琴が告げたと同時に視界が揺らいだ次の瞬間、
背中に何か柔らかい感触を覚え、
それが自室のソファだと気が付いた時には、白井は美琴に押し倒されていた。

「み、さかさん……！何を？！」
「先生が、可愛いから。我慢出来なくて」
「何を……言って」
「私より年上なのに、こんなにちっさくて華奢で。私の言う事にいちいち反応して。ホント、可愛いんだからさ。もうダメ、何もかも、先生のせい」
「御坂さ……ん」
「先生が、悪いんだからね」

一つ、また一つと言葉を重ねる度に距離を縮め、近づいてくる美琴から何とか逃れようと混乱する頭で考えるものの、
既に逃げる場所など無く、せめてもの抵抗手段として精一杯の強がりを言い放つが、
両頬を抑えられ、息もかかりそうな程の距離まで近づいた美琴の顔に思わず目を瞑った瞬間、

「ですから何を言っ……んッ！」

自らの唇に柔らかい何かが荒々しく当てられ、それが美琴の唇だと気付くまでに長い時間は必要無かった。

「……ッふ…」
「先生の唇、柔らかい」
「お、となを……からかうものでは……」
「からかってなんか、無いよ」

嬉しそうに、満足そうに微笑み、白井の頬を優しく撫でながら美琴は再び自らの唇を白井のそれへと重ねる。
油断していた事もあったのだろう。
突然の出来事に一瞬呼吸さえ忘れてしまっていた白井は、
酸素を求める為に少し口を開き呼吸を整えていたその隙を突かれ、
二度目の不意打ちにより、口内への美琴の侵入を許す事となってしまった。

「んんッ……ふッ…！」

自らに組み敷かれた白井が抵抗しようと動く度。
腕の中に収まる程の小柄な白井を逃がすまいと、その華奢な腰に手を回し美琴は自らの方へと引き寄せる。
そして、口内で逃げ惑う白井の舌を追い、器用に絡め取ると更に深く、深く。
白井自身を求めるように、深く口付ける。

（……み、さかさ、ん……）

様々な思考が入り乱れ、冷静な判断を下す事が困難になった白井は
美琴の肩を押し返していた手の力を緩め、無意識のうちに、
何かにすがるように美琴のサマーセーターの肩口を掴んだ。

「観念した？」

白井のその反応に、美琴は白井が自分を受け入れた、と判断したのだろうか。
そろそろと唇を離すと、嬉しそうに微笑みながら優しい口調で言葉を続けると
白井の口角から零れ落ちた唾液を丁寧舐めとり、
再び唇へ、続けて頬、顎、首筋へと順に口付けいった。

自分よりも年下なのに。
自分は教師で、相手は教え子なのに。
自分は大人で、相手は子供なのに。
何故、自分は何も出来ず、美琴を受け入れているのだろう、と。
先程はあんなに拒んでいた筈なのに、と。
美琴からの口付を受けながら、白井は朦朧とする意識の中で、自らに問いかける。

体力的な面で美琴に敵わない事は分かっていた。
大人と言えども白井はむしろ小柄な方で、身長で言えば美琴の方が高かった。
先生は華奢だね、とからかいながら手首を掴まれた事も何度かあった。
美琴が自分を驚かせようと後ろから抱きしめられた時、
自分の体と美琴の体格差が想像以上にある事に気付かされた。
だからこうして覆い被ってしまわれては、抵抗する事さえ困難であるのは当然の事だった。
けれども、だからと言って。

（この、まま……流されては……駄目……）

白井が思考を巡らせていたその時。
白井の頬を撫でていた美琴の細い指が顎のラインを伝い、
触れるか触れないかの距離を保ちながら下へと進んでいき、
そのまま首筋を伝って白井の胸の膨らみを服の上から優しく包み込んだ。

「あッ……！」
「へえ、そんな声、出すんだ？」
「み……みさか、さ、ん？」

白井が思わず上げた艶声に美琴は一瞬驚いたが、
それが自らの行動に依るものだと気が付くと、
嬉しそうに微笑みを浮かべ、再び手のひらを動かし、優しく膨らみを愛撫する。

「や……あ……ンッ！」
「先生、可愛い……」

身をよじる白井の耳元で囁いて。
壊れものを扱うように、丁寧に。
愛おしいものに触れるように、優しく。
美琴は何度もその膨らみを撫でながら、空いたもう片方の手で少し乱れたブラウスの裾を捲りあげると、
下着の上部から見え隠れしている胸の膨ら

Kết quả (Việt) 1:

Mưa không dừng tôi-" Trong khi mưa buổi tối một chút bệnh và Mikoto là trên chiếc ghế dài, tiresomely (mà) đơn giảm. "Tôi không giống như nó là? 」Và mặc dù nó đã hoàn toàn đi cho mình, tin tưởng rằng nó hay không trở về từ mà không suy nghĩ. Roseto là Mikoto đệm chôn khuôn mặt của tôi, Cho cơ thể và sự chỉ đạo của tiếng nói. "Ghét, nhưng đó là không. Long câu chuyện ngắn không chúng tôi."Thật vậy, quá nhiều mưa và một chút cảm thấy depressingly!" Đi trước và và và giữ mug giọng nói Mình cũng được trang bị với một tách, ngồi để phía đối diện của Mikoto. "Là và" Và nhận được của mug màu da cam thông thường Mikoto bao gồm miệng và đổ trà, Thưởng thức hương vị cam bergamot luôn luôn. Thưởng thức trà này ghế sofa trong phòng này chủ nhà hành động thích Mikoto? Trên đồng hồ, nhưng Mikoto là rất yêu thích. Giáo viên uống rượu. Để muốn họ uống sữa, đặt thông báo cho chủ nhà, tìm kiếm sữa. Mikoto mở tủ lạnh là Tại phòng lạnh đã được xóa trên mặt sau đẹp Cocktail lon chói mắt. "Mặc dù nhiều giải trí. 先生、と呼ばれた人物、白井黒子は美琴のクラスの担任であった。 ある時、雨宿りがてら美琴を家に招き入れた事がきっかけで、 また、美琴の両親が海外赴任中の為一人暮らしをしている事もあり、 以来、美琴は何かと白井の家に遊びに来る事が多くなった。 当初は教師の家に入り浸る事にやんわりと注意を促した白井だったが、 勉強を教えて欲しい、と頼まれれば断る訳にもいかず、 結局はそのまま夕食を食べて帰る、と言うのが大抵のパターンとなっていた。 尤も、白井が付きっきりで教えなくとも美琴の成績は常にトップクラスであったけれども。 「どんな時に飲むの？お酒」 小柄な見た目と丁寧な口調から、何となく白井に対してアルコールのイメージが無かった美琴は ジュースと見間違うようなそのカラフルな缶をくるくると眺めながら、 ふと浮かんだ何気ない疑問を投げかける。 「大人には、そう言う気分の時がありますのよ」「飲みたいくらい、イヤな事があるって事？」 「そう言う訳ではありませんけど」 美琴の質問にどう答えるべきか、困ったように笑う白井に対し、 何か思う部分があったのか、美琴は缶を弄っていた手をふと止め、 じっとラベルを見つめながら、ぽつりと呟いた。「……頼ってよ」 「え？」 「何かイヤな事があったらさ、私に話してよ。話、聞くくらいなら出来るし」 「……教師が教え子に、頼るんですの？例えそうだったとしてもそんな事出来ませんの」 突然の美琴の言葉に白井は一瞬言葉を詰まらせるが、何故美琴が突然そんな事を言ったのか。 敢えて深くは追及せず、断りの意を籠めて一般的な答えを返す。 けれども。 「先生はさ。私の事、どう思ってるの」 「……どう、とは？」 「文字通り、そのままの意味で」 いきなり頼れ、と言われたと思えば今度は何を言い出すのだろう、と。 相変わらずの真意の探れない言葉に、そして明らかにいつもと違う様子の美琴に 白井は手元のマグカップを持つ手に力を籠め、何とか弾きだした答えを述べる為 ゆっくりと口を開いた。 「御坂さんは、成績も良くて、人望も厚くて、優しくて。時々困った事もしますけど……わたくしの自慢の教え子ですわ」 「そうじゃなくて、さ」 「え、と……」 どうやら、と言うべきか案の定と言うべきか。 白井が何とか導き出した答えでは納得出来ないらしく、 どう答えればこの困った教え子は満足してくれるのだろうか、と。
半分ほど紅茶の減ったマグカップをじっと見つめ、白井は何も答える事が出来ず口を噤む。

「私は、先生の事。好きだよ」

その言葉が耳に届いた瞬間。
『好き』と言われたその瞬間。
低くもなく高くもなく、すうっと耳に吸い込まれるような心地良い声で、
そう、言葉を投げられた瞬間。
白井の心臓は大きく跳ねあがった。

「嬉しい事を言ってくれますのね？でもそれは、年上に抱く……所謂憧れと言うものですのよ」

平静を保って、何とかそう、言葉を返した。
返したつもりだった。
先程の美琴の告白に、息が詰まるほど動揺を隠せない自分がいる事に驚いて。
そんな自分を相手に知られたくなくて。
けれども、恐らく相手も自分が動揺している事に気付いているだろう、と。
最早、これ以上下手に言葉を返すのは危険だと、そう思ったから。
白井はカップに残った温い紅茶を飲み干すと、カラカラに乾いた口内を潤わせ再び口を噤んだ。

「嘘だ」
「……嘘、ですの？」
「先生は、私の気持ちに気付いてる」
「……」
「先生はさ、何で私を拒むの？」

美琴の言う通りであった。
いつからか、自分に対する美琴の視線が
『教師』に対するそれでは無い事に白井は気付いていた。
けれども、それは気付いてはいけない事であり。
そして認めてはいけない事だ、と。
そう、思っていたから。
仮に、認めざるを得ない状況に陥れば、それは拒まなくてはいけない、と。
自らに、そう言い聞かせていた事であった。
だから、改めて美琴から告げられた真実に対しても、
決して受け入れてはいけないのだ、と。
白井は美琴を拒む為の言葉を口にする。

「御坂さんとわたくしは……生徒と教師、ですから」
「それだけ？」
「年も……離れてますし」
「別にこれくらい離れてても変じゃないでしよ？」
「貴女とわたくしは……同性、ですのよ」

最後にそう、言葉を告げた白井は、これまで冷静に反論していた美琴が
急に黙ってしまった事に気が付くと、
下手な言い訳と気付かれていながらも
納得してもらえたのだろうか、と小さく安堵の溜息を吐いた。
けれども、少しの間の後。

「勝手だね」

そう、聞こえたと思い、顏を上げると先程まで向かいのソファに座っていた美琴が
側に立っていた事に気付き、
どれだけ自分が動揺し、周りに気が向いていなかったかを
知らされた。

「御坂、さん？」
「自分勝手だっての、先生は」
「……どういう」
「どの理由にも、先生自身の意思が籠もってないし。断り方が分かんないから何とか理由を付けて、私を拒もうとしてる」
「それは……」
「自分の気持ちを相手に伝えないで断ろうなんて、そんなの自分勝手と思わない？体裁を気にするがあまりのただの言い訳って」
「……」
「本当は拒む理由なんて無いんじゃないの？」

言われなくても気付いていた。
美琴が自分の事を慕ってくれているように、自分もまた、いつからか
美琴に対して特別な感情を抱いている事に。
けれども、白井自身、その感情の正体が何であるのか理解出来ておらず、
そしてまた、自分は教師であり、彼女は自分の教え子なのだから。
その正体が何であれ、特別な想いを抱く事は許される事では無い、と思ってたから。
だからこそ、ずっと、美琴からの想いに気付きながらも拒み続けていた。

「わたくしは……御坂さんの事が心配で、ご両親も不在だから……保護者の気持ちで接していただけで、
特別な感情を持っているならば、それは親心のような、ものですから……」

それは嘘では無かった。
面倒だから、と言って食事も簡単に済ませている美琴を見る度に。
クラスでも時々、寂しげな表情を浮かべている美琴を見る度に。
人望がある彼女だと思っていたが、実は人に騒がれるのはあまり好きでは無いのだ、と知った時から。
美琴の事が、どこかいつも心の奥で気になり続けていた。
そんな状況だったから、この特別な感情は美琴の言う『特別』では無いと思っていた。
けれども。

「ホントは私の事、気になって仕方ないんでしょ？そんなに動揺してるくせに」
「ち、ちが……きゃッ！」

まるで自分の気持ちを包んでいたオブラートが一枚ずつ剥がされ、
最後の一枚に手をかけられた、そんな感覚に陥った時。

「先生、可愛い」

そう、美琴が告げたと同時に視界が揺らいだ次の瞬間、
背中に何か柔らかい感触を覚え、
それが自室のソファだと気が付いた時には、白井は美琴に押し倒されていた。

「み、さかさん……！何を？！」
「先生が、可愛いから。我慢出来なくて」
「何を……言って」
「私より年上なのに、こんなにちっさくて華奢で。私の言う事にいちいち反応して。ホント、可愛いんだからさ。もうダメ、何もかも、先生のせい」
「御坂さ……ん」
「先生が、悪いんだからね」

一つ、また一つと言葉を重ねる度に距離を縮め、近づいてくる美琴から何とか逃れようと混乱する頭で考えるものの、
既に逃げる場所など無く、せめてもの抵抗手段として精一杯の強がりを言い放つが、
両頬を抑えられ、息もかかりそうな程の距離まで近づいた美琴の顔に思わず目を瞑った瞬間、

「ですから何を言っ……んッ！」

自らの唇に柔らかい何かが荒々しく当てられ、それが美琴の唇だと気付くまでに長い時間は必要無かった。

「……ッふ…」
「先生の唇、柔らかい」
「お、となを……からかうものでは……」
「からかってなんか、無いよ」

嬉しそうに、満足そうに微笑み、白井の頬を優しく撫でながら美琴は再び自らの唇を白井のそれへと重ねる。
油断していた事もあったのだろう。
突然の出来事に一瞬呼吸さえ忘れてしまっていた白井は、
酸素を求める為に少し口を開き呼吸を整えていたその隙を突かれ、
二度目の不意打ちにより、口内への美琴の侵入を許す事となってしまった。

「んんッ……ふッ…！」

自らに組み敷かれた白井が抵抗しようと動く度。
腕の中に収まる程の小柄な白井を逃がすまいと、その華奢な腰に手を回し美琴は自らの方へと引き寄せる。
そして、口内で逃げ惑う白井の舌を追い、器用に絡め取ると更に深く、深く。
白井自身を求めるように、深く口付ける。

（……み、さかさ、ん……）

様々な思考が入り乱れ、冷静な判断を下す事が困難になった白井は
美琴の肩を押し返していた手の力を緩め、無意識のうちに、
何かにすがるように美琴のサマーセーターの肩口を掴んだ。

「観念した？」

白井のその反応に、美琴は白井が自分を受け入れた、と判断したのだろうか。
そろそろと唇を離すと、嬉しそうに微笑みながら優しい口調で言葉を続けると
白井の口角から零れ落ちた唾液を丁寧舐めとり、
再び唇へ、続けて頬、顎、首筋へと順に口付けいった。

自分よりも年下なのに。
自分は教師で、相手は教え子なのに。
自分は大人で、相手は子供なのに。
何故、自分は何も出来ず、美琴を受け入れているのだろう、と。
先程はあんなに拒んでいた筈なのに、と。
美琴からの口付を受けながら、白井は朦朧とする意識の中で、自らに問いかける。

体力的な面で美琴に敵わない事は分かっていた。
大人と言えども白井はむしろ小柄な方で、身長で言えば美琴の方が高かった。
先生は華奢だね、とからかいながら手首を掴まれた事も何度かあった。
美琴が自分を驚かせようと後ろから抱きしめられた時、
自分の体と美琴の体格差が想像以上にある事に気付かされた。
だからこうして覆い被ってしまわれては、抵抗する事さえ困難であるのは当然の事だった。
けれども、だからと言って。

（この、まま……流されては……駄目……）

白井が思考を巡らせていたその時。
白井の頬を撫でていた美琴の細い指が顎のラインを伝い、
触れるか触れないかの距離を保ちながら下へと進んでいき、
そのまま首筋を伝って白井の胸の膨らみを服の上から優しく包み込んだ。

「あッ……！」
「へえ、そんな声、出すんだ？」
「み……みさか、さ、ん？」

白井が思わず上げた艶声に美琴は一瞬驚いたが、
それが自らの行動に依るものだと気が付くと、
嬉しそうに微笑みを浮かべ、再び手のひらを動かし、優しく膨らみを愛撫する。

「や……あ……ンッ！」
「先生、可愛い……」

身をよじる白井の耳元で囁いて。
壊れものを扱うように、丁寧に。
愛おしいものに触れるように、優しく。
美琴は何度もその膨らみを撫でながら、空いたもう片方の手で少し乱れたブラウスの裾を捲りあげると、
下着の上部から見え隠れしている胸の膨ら