Star Gift Special Story”の時間になりました!
このコーナーは、隔週で、キャラクター1人を
フィーチャーしたSSを掲載していくコーナーです。
第二回となる今回は……
“七海哉太”が主人公の話になります!
テーマは“看病”です。
それでは、どうぞ……。
ほんの少しだけ、頭が重い。
その感覚は、今朝、目覚まし時計に起こされたときからあった。
だるい、とまではいかない、ちょっとした不調。
いつもなら、まっとうにサボれる口実ができたと喜んで二度寝に突入するところだが……。
「ん~……」
寝起きのくぐもった声とともに、体制を変える。
ベッドサイドに置かれたカレンダーには、懸念したとおり、自分の汚い字で『サボり厳禁!!』と書いてあった。
「やっぱりか……」
(レポート提出って、今日だったよな……)
3年天文科は、今月頭から授業中に2人1組でのレポート作成を行っている。
これまでに授業で取り上げたことであれば、テーマは自由。ただし必ず2人1組で取り組むこと。それによって、お互いの知識を深め合うことが狙いだ、と陽日先生は話していた。
あいつと2人で出来る作業が楽しくて、それなりに真面目に取り組んでいたから、今日は最後の仕上げを残すのみだ。
別に1人でできない量じゃないし、そもそも清書は俺よりも丁寧な字を書く、あいつの方が向いてる。
どちらかというと、やることそのものより、周りの雰囲気の方が問題だった。
協力して進めるのだから、当然、私語が容認されている。
あの授業中の教室は、近隣のクラスから注意を受ける一歩手前の賑やかさだった。
(もし俺がサボったら、あの騒がしい中、あいつ1人だけポツンと座ってなきゃなんねぇ……)
実際そうなったとして、きっと心配した錫也が声を掛けるだろうけど。
それもそれで悔しいと思ってしまう。
いくら幼馴染みとはいえ、あいつの彼氏は俺だ。
「……これくらいで休んでられっかっつの」
あいつと付き合いだしたのをきっかけに、ちょっとは真面目になろうとも思ったし。
(三日坊主と思われんのも癪だし……な!)
俺は心の中で勢いをつけて、ベッドの誘惑から跳ね起きることに成功した。
――その矢先。
『哉太、調子悪いの?』
出会い頭にこれだ。
「はぁ~? 何言ってんだよ」
念のため、髪をセットするときに鏡を見たが、不調は顔に出ていなかった。頭が重いのは相変わらずだったが、これなら周りに気づかれることもないだろうと、そう思ったのに。
「そんなことねぇよ。それに今日は……」
『嘘! だって、手が熱いもの』
ぎゅっと握られた手に意識を置く。確かにあいつの手はひんやりと感じられて……そういえば、いつ手を握られたのだろう。思い返すよりも早く、今度は白い手が、額に伸びた。
「うわっ」
『うわっ』
似たような悲鳴を上げたのはほぼ同時だった。ただ、その後の行動に差が出ただけ。
『哉太、熱があるよ!』
そう診断をくだしたあいつは、俺の返事を聞かずに繋いだままの手を引いて、ずんずん歩き出した。
方向からして行き先は、魚座寮の玄関。そして俺の部屋だ。
「おい、なんだよ」
『今日、哉太はお休みして。陽日先生には私が連絡しておく。それと、あとで星月先生にも来てもらうから、部屋で寝てること!』
なんてことない、あいつの力だ。
本気を出せば手を振り払えたはずなのに、抵抗さえしないまま俺の体は従った。
強く握ってくるあいつの手が、それ以上に優しくて、気持ちよかったからかもしれない。
俺の部屋の鍵は開いていた。
――確かに、閉めた記憶がない。
躊躇せずに上がりこむあいつに引っ張られて、俺も続く。
(ここ、俺の部屋なんだけどなぁ……)
意識したりしないんだろうか。
むしろ俺の方が気になったが、真剣な横顔にそう尋ねるのもちゃちゃを入れるようで憚られて、口が開けない。
『ほら、哉太。着いたよ』
さっさと寝て、と言いたいんだろう。
俺をベッドに押しやるために、あいつは数歩横に移動した。
と、その時。
『きゃっ』
ズルッ、ボスッという音がした。
昨夜読みっぱなしにしておいた雑誌を、あいつが踏んで滑ったようだ。
元々痛んでいた頭をベッドに落とされ、俺が衝撃に声を上げたのも束の間。
『あっ、ご、ごめん』
「っっ!?」
気がつけば、俺の上にあいつがのしかかっていた。
「おま、え……」
『わわわ、わざとじゃないの! わざとじゃないから!』
慌てているせいでバランスが取れないのか、手は俺の手首をベッドに縫い付けるように掴んだままだ。
触れている皮膚の熱がどんどん上がっていって、目の前にある顔が赤く染まっていくのと同じくらい、自分の熱も上昇しているのを感じる。
さっきまで何度あったか知る由もないが、確実に1度は上がっただろう。
「…………お願い、どいてください」
目に毒すぎて、見ていられなくて。情けなくも、目を背けて懇願した。
『ごめんなさい!』
今度こそ飛び退いた彼女は、逃げるようにベッドから離れた。
ふぅー、と、ゆっくり深呼吸をした後、また近づいてくるあたり、わかっていないなと呆れてしまう。
『と、とにかく、先生に連絡します』
「おう」
『哉太はちゃんと寝てること。……レポートは、私が頑張るから!』
「! ……おう」
『ふふっ、それじゃあ放課後にまた様子見に来るね』
「……へいへい」
ひらひらと、ぎこちない笑顔で手を振って、あいつが出て行く。
(おまえ、男子寮に入っちゃダメなんじゃねーの?)
理性的な部分で学園のルールを伝えようとも思ったが、先生たちに頼むなりなんなりしてやって来る姿が想像できてしまったので、大人しく黙って見送った。
静かになった部屋で、どくっどくっと主張を続ける心臓を抑える。
(これ、悪化したらおまえのせいだかんな……)
収まりのつかない気持ちをどうにか静めようとしながら、瞼を閉じる。
(……けど、明日よくなったら、おまえのお陰だって言ってやるか……)
シーツに残ったあいつの香りが鼻に馴染んできた頃、俺はようやくひと時の眠りについた。
その数分後。
夢にあいつが出てきて飛び起きたことは、悔しくて恥ずかしいから黙っておく。
今回の哉太のお話はいかがでしたでしょうか。
次が誰なのかは……
次回までのお楽しみに!
最後に……必ずご要望にお応えできるとは言えませんが、
現在、皆様から読みたいSSの内容を募集中です。
こんなSSが読みたいよ~と言うのがありましたら、
各キャラクターのTwitterへリプライをください!
甘いお話になるのか、楽しいお話になるのか……
どんな内容になるかは、皆様次第!
ファンの皆様にとって贈り物になるような物語を、お届けしていきたいと思います。
それでは、次回の“Star Gift Special Story”は
5月28日更新ですので、お楽しみに!
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